事務所作成記録

事務所紹介【事務所作成記録】

事務所はすべて自分一人だけで製作しました。その過程を紹介します。
 

其の一 「2011.11 剥がし」

 


以前から、自分の税理士事務所は「コンクリート打ちっぱなし」にしたくて、色々と素材物件を探していました。
しかし、「これだ」と思った物件はすぐに売れてしまい、なかなか出合いがありませんでしたが、ある日ついに理想の“素材”を発見。
早速、仲介担当者さんに問い合わせたところ、「ほんの一足早く商談に入ってしまいました」という返事。
「キャンセルになるかもしれませんよ」と言われるものの、この時ばかりはガックリ(その前の物件も一足先に商談済みだった)
ところが数日後、キャンセルのお知らせが! すぐに「商談中にしてください」とお伝えし、はやる気持ちで内覧日を待ちました。
長い数日間の後 やっと物件を内覧。「一応値引交渉をしてみます?」との提案があり、「エアコンが壊れていてもクレームを言いません」という条件で交渉してみると・・・
数日後、値引きOKとの返答が!
初めからコンクリート打ちっぱなしにするつもりなので、壁紙が汚なかろうが、床がコーヒーのしみだらけであろうが全く気にしません。(しかし恐ろしいほどのタバコのヤニ…)
契約から引き渡しまで毎日の長いこと… ワクワクして夜も眠れません。
何かと理由をつけては物件を見に来たりして気を紛らし、やっと引き渡しが終わりました。 
そして遂に「製作開始」です。
 
まずは姿勢から ワークマンでニッカボッカや足袋を買い気合いを入れなおします。(誰が見ても現役の国税職員だとは思わないでしょう)
しかし何よりも、パネルの下にあるコンクリートの状態はどうなのか?とても気になります。
目指すはコンクリート打ちっぱなしの cool な壁面、大幅な化粧直しが必要ならば大変な工程が待っています・・・と言うより、素人には補修作業自体無理かも?
 
物件は1988年築、ということは阪神大震災の前!激震の走ったこの場所で、ヒビが入っていないか?コンクリートのお肌状態はいかがなものか?
まずは恐る恐るパネルを剥がしてみます。


上下の部屋の方に迷惑をかけないよう、静かに静かに慎重にパネルを剥がしていきます。
初日にここまで剥がしたら、すっかり夜になりました。
気泡やモッコンはあるものの、GLボンド(パネルを接着するための団子状のボンド)をきれいに落とせれば、なかなか良い状態であることが分かりました。
換気扇を外してみたら…右の換気扇にはハトのミイラが、左の換気扇には産みたてほやほやの卵が…
 
外扉が閉まり閉じ込められたのか? これを見たら「鶏の半身揚げ」とか「スズメの丸焼き」なんてのは食べられなくなりますな…
 

ちなみに間取り図。

 

其の二 「2011.12 はつり&磨き」

 


それからは土日と仕事が終わってからの深夜に(たまに飲み会が終わってからも)、ひたすらパネルを剥がしてGLボンドをはつる作業に没頭しました。(あまりに没頭しすぎて写真を撮るのも忘れていました。またその間に秘密の工程が・・・)
昼は仕事、夜も結構な頻度で作業したためちょっと過労ぎみに・・・(目がショボショボ・筋肉痛と腰痛。肉体労働はたいへんです)
天井は直接壁紙が貼られている。 「壁紙はがし剤」と熱湯で永年の劣化で変質した壁紙を剥がしてみると…天井部分のコンクリートにはシーラーが塗ってあり、壁のコンクリートと色合いが全く違う…
脚立に立って天井の壁紙を剥がす作業はとても辛い、首と腰がガチガチになりながらも、少しずつ壁紙を剥がしていきます。

左の換気扇の中ではお母さんバトが2つの卵を抱卵中なので、巣立ちまでの間そっと覆いをしてあげました。
お父さんハト=灰色 お母さんハト=真っ白 →卵は灰色と真っ白の2つ! 後にそっと見てみるとヒナも灰色と真っ白!(遺伝の法則なのかと感心しつつ)

来る日も来る日もGLボンド痕を一人ひたすらノミではつっていきます。
できる限り音がしないように…コツコツといつ終わるともわからない作業、気分は「平成岩窟王」です。
真冬ですが気分は熱々なので、素手にぞうきんでコンクリートを磨きます。
亀の子たわしを使ってみたり、不織布を使ってみたり、フライパンを洗う金属たわしを使ってみたりと色々やってみましたがどれもほとんど同じ。
肝心なのは「根気」 心の中で「千里の道も一歩から」などと自分を励ましながら、一時間でも暇さえ見つければコンクリートを磨きに来ました。

ちなみに反対側、ミニキッチンにパーテーションがありましたがすべて撤去。

これがこんな感じに 

とにかく天井の壁紙を剥がすのが大変、霧吹き片手に剥がしまくります。

天井の蛍光灯を外してしまうと夜はこんな感じです… この頼りない明かりの中で、一人ひっそり作業を続けます。
壁に埋め込まれた「ウォールスルータイプ」のエアコン。
スイッチを入れると「ガランゴロン」と大きな音がしますがなかなか効きが遅い・・・かなり電気代もかかりそう。型番から調べてみると、このタイプのエアコンは既に製造されておらず撤去することにしました。(昔、船橋の税務大学校の寮にあったエアコンとそっくり)数少ない情報では1台100kgの重さがあるらしい・・・(左右に1台ずつ、合計2台ある)
分解できる部分はひたすら分解、外れない枠は大きなバールで外す。とにかく重く、中からはトナーのような黒い粉がたくさん出てきた(ヒエ~ッ)

ミニキッチンも取り外し、配管むき出しの状態に。

天井と梁に塗られたシーラーの上から、「サンペイントセメント」で壁面と色合わせをします。(どこのホームセンターにも売っておらず、小分けで手に入れるのに苦労しました)
ライティングレール&総LED電球も到着。
とりあえずは蛍光灯の取付アンカーボルトに仮留め、このあたりから少しずつ壁面もキレイになってきました。
※㈱防水科学研究所「サンペイントセメント」(参考)http://www.nihonkousan.com/
いつもなら「ピイピイ」と聞こえてくるヒナの声も最近聞こえない。ひょっとして巣立っているのか?と思い、そっと覆いを外してみると・・・
彼らは大量のフンを残して巣立っていました。
ようやく占有者がいなくなったところで、外れてしまっている排気口のフタを修理。
ところが彼らは夜の寝床にしているのか? 何度もやって来ては窓の外からうらめしそうにこちらを伺っています。
心を鬼にして「スマン、どっか他をさがしてくれ」とハトに告げ、フンをきれいに掃除しました。 
 
エアコンを取り外し、金属ゴミだらけに・・・
前に出た金属ゴミと合わせて合計500kgほど、自家用車で金属リサイクル業者へ持ち込むと合計1万円ちょっとで買い取ってくれました。
換気扇の跡はステンレスの板で覆い、中にLED電球を仕込み間接照明を製作することに決定。
早速ステンレス板の調達です。オークションで、大阪市東成区に 30センチ×30センチの端材に穴あけ加工をしてくれる業者を発見。 すぐに落札し加工を依頼、スクーターで引き取りに行きました。
若干の再穴位置合わせの後、アンカーボルトでステンレス板を仮留め、(ちなみに今でも仮留めのままです)
事務所入り口にあるスイッチが、①事務所右半分 ②事務所左半分 ③右換気扇 ④左換気扇 という区分けになっているので、この間接照明はメインスイッチでon/offできるようになっています。

ステンレス板じゃなくて、乳白色のプラスチック素材の方が良かったかな? 
それにしても自転車の数が多いので、あちらこちらに非難させながらの作業でした… GLボンドのはつった粉が付いてどの自転車も掃除するのが大変。

GLボンドをひたすら剥がし、何度も磨き、出てきた粉を何度も何度もモップで拭き、やっとここまできれいになりました。
ようやく「峠を越した」と言ったところです。
 
来る日も来る日も、それも真夜中に地道に磨き続けた成果が実り、かなりシャープになってきました。
 
それにしても朝日が眩しい、特に徹夜明けには(笑) 

 

其の三 「2012.1 フローリング」

 


床を貼る前に待ちきれずキャビネットを購入。

そして、雨の激しい日にフローリング材が到着。

 

最初は、開拓時代アメリカの古材である「ラスティックパイン」(これがシブい)を使う予定でしたが、見積もりしたところ…材料代だけで47㎡100万円!
※㈱小山製材 ラスティックパイン(参考) http://www.oyamalumber.com/fr_floor.html
 
床材料代に100万円は予算をはるかにオーバー。
そこで羽目板加工済みのパイン材に「古材再生風(ラスティック調)」に塗装することに決定。
長さと幅から必要枚数を計算する。部屋自体壁面パネルを取り外した分 5cmずつ広くなり、登記上46.2㎡から少なくとも1㎡は広くなっているので 合計47㎡で計算。羽目板は既製の尺(3m)ではない端材で節穴ありのアウトレット品です。(逆に節穴ありに風合いが出ると読んだ) 驚きの価格は秘密です。
※㈱小山商店 無垢レッドパイン羽目板・乱尺節穴アウトレット品 (参考)http://www.rakuten.co.jp/webshopkoyama/
 

次に塗料です。大橋塗料の水性塗料「ワンダー」を3色取り寄せ、配合しながら塗装していきます。
この塗料はネットで取り寄せしないと手に入りません。
この塗料は水性でイヤな臭いもなく、ものすごく塗りやすいとても良い塗料でした。これはおすすめです。
※大橋塗料㈱ ワンダー水性1液型 (参考)http://ohhashi.net/shop/wp-cp1.htm
一枚一枚、塗装しては乾かし、重ね塗りをして乾かしの繰り返しです。
最初はムラができないように塗っていましたが、濃淡やムラができる方が味が出ることが分かりました。
黒、赤、カーキの基本色を配合して、または黒を塗って、2度目は赤だけ塗って、といった風に出来る限り違った色合いに仕上げていきます。
塗装は片面、上手に乾燥させないと板が反ってしまうため、できる限り垂直・水平に並べ、乾燥させていきます。
仕上がりを A B C に分け、目立たないところにBからCを使い、これから目に触れることが多いと思われる場所には A が来るように配置します。
しかし、全体のバランス・総合的な仕上がりはやってみないとわからないため、真面目に配置を考えすぎると時間ばかりかかって進みません。
(ちょっとアーティストっぽい気分で、色々置いては遠目で見て、いやこれじゃないわとか言いながら・・・)
電車で帰る日、朝までやる日は、缶ビールを飲みながら勢いで仕上げていきました。
ランダムに、でもきれいな板をメインに・・・と考えつつ、一枚一枚丹精込めて貼りつけます。
そして時に気合を入れ過ぎ、ハンマーで指を打ち付けながら、ひたすら貼り続けます。
羽目板を貼る作業は、とにかく作品を仕上げる感覚で楽しいのですが、とても肩や腰に負担がかかります・・・
貼る時の叩きを間違えれば羽目板の凹凸を潰してしまい、また、乾燥時に反りが入った板は簡単にははまってくれません。とにかく大切にはめ込んでいくのですが、気に入った板ほど上手くはまってくれませんね・・・。
ここまで来ると、後は「㎡計算が間違っていて板が全然足りない」と言ったミスがないことだけが気になります。
しかし実際には、破損・塗装ミスを考えて少し多めに発注していたので結構余りが出ました。

 
ドアもつや消し黒で塗装。(丹念に油分を拭き取り、伸びの良い水性塗料で塗装しました)
 
そして遂に・・・
 

 
全面貼り終えた! やった、ついにここまで来た・・・
 

 
栄町通りの夕方の風景。   それにしても、夕方の紫はいい色だ・・・?
 

 


2012.9 開業直後 エアコンを取り外した跡に、化粧ボードで棚を作成。

2013.7 エアコン・セコムが入りました。インターホンは黄色く変色しています。(そのうちリメイクします)

2014.6 配管だけになっていたキッチンも、業務用シンクで使いやすい形になりました。
サンワカンパニーのステンレスキッチンを考えていましたが、あれこれ悩む間、コップも洗えない状況に困り一気に決めました。(キッチン予算は20万円→3万円程度 ※結局、業務用シンクとIKEAの小物で安く上がり、小傷を気にせずガンガン使えるので充分満足しています)
当初は事務所のリフォームすべてを自分一人でやろうと思っていましたが、温水用の鋼管の取り回しにはプロの溶接が必要なため、「配管工事業」である私のお客様にお願いしてやってもらいました。
今のところIHの代わりに登山用のコンロを使っているので、常にアウトドア気分です。

 


 2014.7 現在の状況です。 開業から約2年、書類等も増え、ちょっと狭くなりました。
 


 反対側です。 奥の緑はナツハゼ(そのうち鉢植えを手に入れる予定)
 


ショーベタ(♂)君たちが仲間入りしました。 彼らはとてもケンカ好きなので、これ以上近付けるとヒレを立てて威嚇しあいます。
 


一度は枯れかけたウンベラータも復活しました。 ウンベラータは容易に挿し木で増やすことができ(葉からも増やすことができる)、この親木からいくつもの苗を作りました。
欲しい方は苗を差し上げます。